ザ・ノンフィクション
芸に命をかけた人 ~南部虎弾と妻の約束~ 後編 (2024x18)
:
世田谷の小さなアパートで小さな食卓を囲む夫婦は、特別な絆で結ばれていた。
18歳年下の妻は自分の「腎臓」を一つ、夫に分け与え、夫は妻からもらった「腎臓」で命を永らえ、芸人としての人生を最後の最後まで全うすることができた。
夫の名は、南部虎弾(72)。過激なパフォーマンスで知られる「電撃ネットワーク」のリーダーだ。夫婦は30年以上、この古いアパートで暮らしてきた。
1990年に南部が結成した「電撃ネットワーク」は、体を張った芸でブレイクするものの、危険を顧みないパフォーマンスは「不適切すぎる」と見なされ、次第にテレビに出られなくなる。さらに不摂生がたたり、南部は60歳で「糖尿病」を発症、病状は悪化の一途をたどった。人工透析に踏み切れば、南部はもう舞台に上がることは難しい。そんな南部に「夫婦間腎移植」を提案したのは、妻の由紀さん(53)だ。移植は成功、妻の献身的な支えや健康管理があり、南部は再び、舞台に上がることができた。そして、腎移植から5年…地方公演に行く前夜に南部は脳卒中で倒れ、そのまま帰らぬ人となった。
35年、ハチャメチャな夫に連れ添った妻の由紀さんは、南部をみんなで明るく送り出したいと、ド派手な衣装を身にまとい、葬儀の喪主をすることになった。
ザ・ノンフィクションだけが撮影を許された、前代未聞の「お葬式」でカメラは妻の深い悲しみを目撃することになる…
【語り】河合優実