ザ・ノンフィクション
上京物語2024~シェフと父さんのケーキ~ 前編 (2024x13)
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2023年春、二十歳の若者が故郷・山形を離れ東京へ。飛び込んだのは菓子職人の世界…
東京・千歳烏山にあるフランス菓子店「ラ・ヴィエイユ・フランス」。本場フランスで11年修業を重ねたオーナーシェフの作るスイーツを求めて、お店には常に行列が絶えない。多くの若者がシェフの仕事に憧れ、その門を叩くが、菓子作りには一切の妥協を許さない厳しい指導が待ち受けている。
この店の新人、金野来(こんの・らい)さん(20)。10代の頃から、やりたいことが見つからず、高校卒業後は父親が営む洋菓子店で働いていた。しかし「一度は、外に出て修業をするべき」という父との約束で、山形から上京してきた。
父の下で2年の菓子作りの経験はあるものの、伝統の技を守り、こだわり抜いた「ラ・ヴィエイユ・フランス」の菓子作りは実家の洋菓子店とは大違い。そのギャップに戸惑いながら、厳しいパティシエ修業の日々が始まった。
そんな新人の来さんを指導するのは、キャリア8年目の草野さん(30)。シェフの右腕として店には欠かせない存在だ。草野さんの実家も、長崎市内に4店舗を構える洋菓子店。「いつかは故郷に帰り、父の店を継ぐ」そう思い描いていた。
しかし、4年の交際の末、結婚を申し込んだ彼女に「長崎には行けない」と告げられてしまう。故郷へ帰り、父の店を継ぐのか…それとも東京で生きていくのか…
人生最大の決断を迫られていた。
【語り】伊原六花