新日本風土記

新日本風土記

越中八尾 風の盆 (2014x23)


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歴史と風情の息づく山間の小さな町、富山市八尾(やつお)町。立春から数えて二百十日にあたる9月1日、「おわら風の盆」が始まる。人々は、三日間にわたって、民謡「越中おわら節」に酔いしれる。胡弓と三味線がつむぎだす哀しげな音色、絞り出すような歌い手の声が石畳の町並みに響く。艶やかな浴衣に身を包み、編笠に顔を隠した踊り子達が月影に揺れる。その哀愁を帯びた雰囲気に惹かれて、二千人余りが住む町に、二十万人もの観光客が集まる。 八尾は、幕末から明治にかけて、蚕の繭や生糸の取引で栄えた。花街が作られ、そこに集う芸者や旦那衆が、おわらに磨きをかけ、洗練させてきた。おわらには、心浮き立つ賑やかさや派手さはない。しかし、八尾の人々は、その哀しげな調べに人生の機微を映しながら生きてきた。たとえば、故郷を愛する思い、恋心、生きる上で背負う悲哀・・・今年で引退する踊り子はおわらで青春をしめくくり、伴侶を失った女性は夫と過ごした日々を振り返る。 八尾独特の風土や歴史、芸を極めようとする誇り高き気質なども織り込みながら、おわらと共に生きる人々を見つめる。 <オムニバス項目(抜粋)> ●最後の晴れ姿・・・   八尾に生まれ育ち、2歳から踊り始めた女性。25歳の今年、踊り子を引退する。 ●弔いのおわら・・・   急逝した囃し手の男性のために、町の仲間が集まり、おわらで弔う。 ●おわら未亡人・・・   おわらのため不在がちな夫に妻は不満顔。だが風の盆の夫は魅力的に見える。 ●暮らしの中で生まれた歌詞・・・   5000以上にのぼるおわらの歌詞。人生の機微を詠む92歳の女

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