新日本風土記

新日本風土記

郡上八幡 (2012x22)


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清流、長良川の上流に位置する岐阜県郡上市八幡町。夏の夜、この町の人々は盆踊りに酔いしれる。7月から9月にかけて毎年、三十三夜にもわたって盆踊りを開催し、しかも、お盆の4日間は夜8時から朝5時まで徹夜で踊り明かすのである。「郡上おどり」と呼ばれるこの盆踊りは、江戸時代、時の藩主が士農工商融和のために奨励したものと言われている。 郡上おどりは「見る踊りではなく、踊るための踊り」。会場に見物客はいない。地元の人も観光客も、老若男女一緒になって一晩中踊り明かすのだ。町では、そんな踊り好きな人たちのことを、親しみを込めて「踊り助平」と呼ぶ。 夜、踊り助平たちは城下町の風情を残す町中の路地に集まり、その真ん中に太鼓や三味線を演奏する囃子方と歌い手が乗り込んだ「屋形」を置いて踊りの輪を作る。先祖への思いを抱きながら踊る人、夏休みの夜を友達と一緒に楽しむ子ども、郡上おどりが縁で知り合った男女。踊りの輪にはさまざまな人の姿がある。 この「踊りの町」郡上八幡には、今も古き良き日本の風景がたくさん残っている。江戸時代に作られ今も生活に利用されている水路。川で元気いっぱい遊ぶ子どもたち。互いに支え合い絆を深めるための組織、頼母子講(たのもしこう)。この土地の風土・風習の1つ1つが郡上八幡という町を作りあげてきたのである。 400年もの間、盆踊りを続けてきた郡上八幡の人々。皆で踊ることで彼らは何を得てきたのか。そして、日本人にとって盆踊りとは何か。郡上八幡のひと夏を見つめる。

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