新日本風土記
仁淀川 (2011x21)
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ガラスのように透き通った、日本一の水質を誇る清流が、高知県の中央を流れている"仁淀川"。
全長124km。西日本最高峰・石鎚の森に端を発し、小枝のような支流を悉く集め、末は黒潮の土佐湾に注ぐ。その雄大な流れは、豊かな動植物の生命を支え、独特の川文化を育み、人と川が響きあう風景を紡ぎながら流れる。
上流の川沿いにある保育園では、夏場、プールの代わりに子供達は皆、川で泳ぐ。どんな石が滑りやすいのか、どんな所の流れが強いか、子供達は身をもって学んでいく。中流に欠かせない風景といえば、沈下橋。これは、増水時、水面下に沈む事を想定した橋で、水の抵抗を軽減させるため、欄干がない。日本人が、自然にあらがうのではなく、自然のリズムの中で川と調和して生きていた時代を偲ばせる。下流では、かつて、世界で最も薄い和紙・典具帖紙で栄えた町がある。今は、祖父から技術を受けついだ、たった1人の若者が、仁淀川で生きる誇りを胸に和紙を漉き続けている。
かつては日本中どこでも見られたであろう清冽な川の流れ、そして水辺の情景。仁淀川が魅せる14篇の物語が、人と川の原風景を描き出す。