ザ・ノンフィクション
新宿二丁目の深夜食堂〜人生を奏でるビール瓶〜特別編 後編 (2024x29)
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新宿二丁目の深夜食堂が53年の営業を終えてから約1年。あの名物ママは、初めて過ごす穏やかな暮らしの一方で、持病である糖尿病が悪化、さらに、がんの手術に臨んでいた…
2023年9月30日。新宿二丁目で数え切れない孤独や絶望を受け止め、人々の背中を押してきた深夜食堂「クイン」が“最後の夜”を迎えていた。
別れを惜しむように店にあふれる客。店内に入りきらない客が、店外の階段で列をなしていた。わざわざ休暇を取って駆けつけた会社員。自分の店を抜け出してやってきた“二丁目の住人”たち。名物ママのりっちゃん(当時78歳)と料理担当の夫・孝道さんを笑顔と感謝で送り出そうと店に詰めかけていた。
そして、最後の夜が明けた朝、店にやってきたのは、二人の娘と孫たち。
多くの常連客に惜しまれつつ、人々に愛された深夜食堂「クイン」は53年の歴史に幕を下ろした。
真夜中の0時に開店し朝の9時まで営業という生活を半世紀以上も続けてきた夫婦は、約15年ぶりに列車に乗って温泉旅行に出掛けるなど、初めて夫婦水入らずの“普通の生活”を手に入れていた。
2024年夏、「クイン」の常連客たちが、久しぶりにりっちゃんを囲む会を開催。そこに現れたりっちゃんは、持病である糖尿病が悪化し週に3日の人工透析に通う体になってしまっていた。さらに、4日後にがんの手術を行うと語り始める…
【語り】吉田羊