ザ・ノンフィクション
新宿二丁目の深夜食堂2 ~名物ママ 54年目の決断~ 前編 (2023x40)
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新宿二丁目を見つめ続けて53年…午前0時開店の深夜食堂を営む名物夫婦に決断の時が迫っていた。
LGBTQが集う街・新宿二丁目で、午前0時から朝の9時まで営業する「クイン」は、1970年(昭和45年)のオープン以来、この街に流れついた人々の心を癒やしてきた。多くの客の目的は、名物ママ・りっちゃん(78)に会うこと。恋愛の悩みや人生相談など、ここでしか話せない悩みをぶつければ、返ってくるのは、優しいアドバイスや、時に厳しい叱咤激励…心の中にポッカリ空いた穴を埋めてくれるのだ。さらに、夫の加地さん(77)が作る「焼き魚」や「しょうが焼き」、「おにぎり」や「500円定食」など、安くて温かな家庭料理が、お腹を満たしてくれるのだ。
78歳を迎える夫婦が客のいなくなった店内で語り合うのは、「店の今後」について。店舗の賃貸契約が2024年夏に更新を迎えるからだ。年々、体力の衰えを感じ、今では、閉店時間の朝9時を待たずに店を閉じる日も…それでも、「店を辞めないで」という“二丁目の住人”たちの声に応え、満身創痍の身で、営業を続けていた。
2023年夏。夫婦は来夏の賃貸契約の更新を機に「クイン」を閉店することに決めた。
残りは、あと1年…心のよりどころを失うことに動揺しながらも、「最後まで見守りたい」と声援を送る常連客たち。しかし、そんな中、連日続いた記録的な猛暑で、夫・加地さんが、突然倒れてしまう…
【語り】吉田羊