新日本風土記
鮎 (2013x31)
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夏の訪れと共に、釣り人たちの心をざわめかせる魚がいます。「鮎」。
なぜ日本人は、かくも「鮎」に魅了されてきたのでしょうか。
6月の漁の解禁では、全国の川に釣師が集まります。腕自慢の太公望をひきつけてやみません。京都の料亭では、とれたての鮎の塩焼きを楽しむ食通たち。
香魚ともいわれる独特の香り、ほのかな甘みをもつ柔らかな身の味。
鮎は、古くは古事記や日本書記にも記され、遠い昔から日本人に親しまれてきました。
平安時代の辞書には、こう記されています。
「春生じ、夏長じ、秋衰え、冬死す。故に年魚と名づくなり」
春、海から川をのぼり、
夏、川底の石について藻を食べて大きく育ち、
秋、川を下って産卵し、短い命を終える。
四季の中で、誕生から死までを過ごす儚い命。
川の記憶と共に、私たちの心に残る魚、鮎をめぐる物語を探しに全国を旅します。